熊野古道中辺路 最難関「大雲取越」を歩く!熊野那智大社、那智山青岸渡寺から雲をつかむがごとき険しい旅路へ!
京都から熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺)までの熊野詣の旅路を終えた巡礼者は、ゴールの熊野那智大社の背後にそびえる那智・妙法の山々を登り、本宮へと戻りました。この山々を越えるルートを大雲取越(おおぐもとりごえ)・小雲取越(こぐもとりごえ)と呼びます。
その中でも大雲取越は、熊野那智大社・那智山青岸渡寺から新宮市の小口までを結ぶルートで、道中は雲の中を行くがごとき険しい山に分け入り、厳しい坂道を越える、熊野古道中辺路の中でも最難関とも言われているルートです。ただしその分歩きごたえがあるとともに、色濃く残る古道の雰囲気や、峠から望む美しい眺望など熊野古道随一の景観美を楽しむことができます。
多くの方は通常1泊2日で大雲取越・小雲取越を踏破しますが(小口で宿泊)、小口にはバス停もあるため大雲取越のみ歩くことも可能です。ただしバスの本数も少なくアクセスが非常に限定されるため、大雲取越のみ歩く予定の方は事前にバスの時刻表や行き先などよく下調べしてから行動計画を立てるようにしてください。
※アクセス等については、田辺市熊野ツーリズムビューローのホームページ等をご参照ください→こちら
距離:約14.5km 標準歩行時間:約5時間
※歩行時間に休憩時間は含まれていません。
【コースマップ】 ※ダウンロードはこちら
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 7時間
- 移動手段
- 徒歩

熊野那智大社
朱塗りの社殿が美しい熊野信仰の中心地
全国4000社の熊野神社の総本社で、熊野速玉大社・熊野本宮大社とともに熊野三山と呼ばれています。ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』にも登録されており、御本殿域は国指定重要文化財となっています。古くから熊野の神々は那智の滝本にお祀りされていましたが、山の中腹に社殿をつくり、熊野の神々と滝の神様をお迎えしたことから始まる神社です。
創建より1700年ほどの歴史があるこの場所は、落ち着いた雰囲気の中で深い精神性と日本の自然を体感したい方にぴったり。四季折々の自然を感じながら463段の石段を登ると、朱塗りの社殿が6棟あり、その落ち着いた美しさに心が洗われます。
社殿には、熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ、イザナミノミコト)を主祭神として、それぞれに神様が祀られています。結びの神様である熊野夫須美大神を主祭神としてお祀りしていることから、熊野那智大社を結びの宮として信仰し、人の縁や諸々の願いを結ぶとして崇められています。また、境内にある御縣彦社(みあがたひこしゃ)では、熊野の神様のお使いであり、より良い方向へ導く「お導きの神様」とされる三本足の烏「八咫烏(やたがらす)」が祀られています。
3月末から4月初め、桜の季節の熊野那智大社は必見!上品で優雅な姿を見せる枝垂桜が訪れる人々を迎え入れ、古き良き日本の情緒を感じることができます。石段の登りが心配な方でも、車やバスを利用して気軽に訪れることができるため、どなたでも神社の静かで穏やかなひとときを堪能することができます。
- 住所
- 東牟婁郡那智勝浦町那智山1
- 電話番号
- 0735-55-0321
那智山青岸渡寺
那智の滝と三重塔の絶景を堪能!世界遺産の熊野信仰の中心地
⽇本最古の巡礼路である西国三十三所観音霊場の第一番札所として知られる那智山青岸渡寺は、熊野那智大社とともに神仏習合の霊場として栄えた天台宗の寺院です。2004年には世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に指定され、見どころも多岐にわたります。
天正18年(1590年)に豊臣秀吉が再建した本堂(如意輪堂)は、天然木の質感を活かした「素木造り」で、当時の建築技術を色濃く残しています。堂内にある日本一の大鰐口は秀吉が寄進したものです。
本堂の後方からの景色は、名瀑・那智の滝と朱塗りの三重塔の美しい調和が楽しめる絶好のフォトスポット。また、塔の上層階からは那智の滝や太平洋の広大な景色を望むことができます。
- 住所
- 東牟婁郡那智勝浦町那智山8
- 電話番号
- 0735-55-0001
- 営業時間
- 7:00~16:30
那智高原公園
トイレ、駐車場あり(標高約550m)
那智山青岸渡寺から約200m登ったところにある森林公園です。今は運営されていませんが、トイレが整備されており一息つくことが可能です。
登立茶屋跡
標高約665m
大雲取越の中で最も那智に近かった茶屋です。当時この茶屋は市場としての役割も担っており、那智の漁村に暮らす人々と内陸部にある田辺の人々との交易の場でもあったといいます。
ここから先は一気にこのコース随一の眺めを誇る舟見峠へと登り詰めます。
舟見茶屋跡
標高約870m
舟見峠にさしかかる場所にあり、『西国三十三所名所図会』にも登場する茶屋跡。舟見峠は、大雲取越の中で一番標高の高い峠です。東屋が整備された休憩所からは、左手眼下に熊野灘、右手に妙法山、那智高原、那智勝浦町を一望できます。
本宮地域から大雲取越を通って熊野那智大社に向かう参詣者にとっては、ここは最初に目的地の那智の姿を遠望できる場所でした。また、本宮に戻る人々にとっては、振り返って那智に最後の別れを告げる場所でした。いずれの方々も参詣者たちはこの茶屋で足を止め休憩し、大パノラマの景色を楽しんだといいます。
Column
亡者の出会い(もうじゃのであい)
船見茶屋跡から色川辻までの間には「亡者の出会い」と呼ばれるおどろおどろしい通りがあります。伝説によると、この道を歩いていると、向かい側からやってくる亡くなった友人や肉親に出会うことがあると伝えられています。
熊野は古来から死後の世界と深く関連があるとされていて、「日本書紀」によると、熊野はイザナミノミコトという神が埋葬された場所であり、その夫であるイザナギノミコトが彼女を追って亡者が住む黄泉の国へ向かった場所でもあると伝えられています。
この場所で人に出会った巡礼者が、出会ったときにはその人は既に亡くなっていたことを家に帰ってから知ったという逸話も残されています。

色川辻
標高約770m
ここから次の目的地「地蔵茶屋跡」まではアップダウンを繰り返し、林道に合流すると舗装路を約1.3km下り到着します。
地蔵茶屋跡
トイレ、自動販売機あり(標高約700m)
大雲取越のちょうど中間地点に位置しており、茶屋は1921年まで運営されていたとのことです。地蔵茶屋の名前は、近くにある地蔵堂にちなんでつけられました。
なお、トイレについては冬季凍結のため12月末から翌年3月上旬まで利用できないので注意ください。
石倉峠
標高約800m
越前峠
標高約850m
ここから「楠の久保旅籠跡」までは急坂に石畳が点在する「胴切坂」という大雲取越・小雲取越の中の最大の難所となっています。なお、ゴール地点の小口の標高は約65mですので、小口までの約5kmの距離の間で800mも下ることになります。
楠の久保旅籠跡(くすのくぼはたごあと)
標高約380m
約1.5kmの区間に数ヶ所の屋敷跡が見られ、江戸時代には数十軒の旅籠(はたご)があり大変にぎわったといいます。北に見える小雲取越の茶屋を指さして「あそこまで宿がないから今日はここで泊まるように」と客引きしていたとの話も残っています。旅籠は大正時代まで営業されていたとのことです。
円座石(わろうだいし)
標高約200m
熊野三山の神々が車座になって酒を酌み交わし、笑談した岩といわれる円座石。円座とは藁やいぐさで編んだ丸い敷物をいう方言で神職が用いる座布団を指し、石がそれに似ていることからこの名がつけられました。岩には3つの梵字が彫られており、その梵字は熊野三所権現が円形に座って談笑する図が表現され、向かって右から阿弥陀如来(本宮)・薬師如来(速玉)・観音菩薩(那智)といわれています。
大雲取登り口
Column
南方商店
大雲取登り口のすぐ近くにある商店です。
7時~18時で開いており、基本的には年中無休(不定休)で食料品や飲み物の他、衣料品なども販売しており、大雲取越・小雲取越を踏破する方にとっての非常に頼もしい補給ポイントとなっています。
小口自然の家
トイレあり
小口にある宿泊施設です。小口に到着後は、バスで新宮市か本宮に向かう方法と、小口に宿泊し、翌日、小雲取越を歩いて本宮を目指す方法があります。
小雲取越に関する情報はこちらから
新宮市の小口と田辺市本宮町の請川を結ぶ約13kmのルート「小雲取越」。大雲取越と比べるとそこまでアップダウンも激しくなく、途中は快適な尾根道を歩くことができます。
モデルコースについては下記からご確認ください。