熊野古道 紀伊路
紀伊路は、鳥羽離宮(現在の城南宮)から淀川を下り、摂津の窪津で上陸、沿道の王子社に巡拝を重ねながら河内国、和泉国を通り、現在の府県境でもある雄ノ山峠を越えて紀伊国に入ります。そして、和歌山市、海南市、有田市、有田郡、御坊市、日高郡内を通り、中辺路、大辺路との分岐点である田辺市を経て熊野三山に至ります。
現在の和歌山市から田辺市に至る沿線には、日前宮、紀三井寺、長保寺、道成寺など、由緒ある社寺や、白鳥の関、吹上の浜(和歌の浦)、藤白坂、糸我峠、結松など万葉集等の有名な和歌が詠まれた景勝地が点在し、このルートの大きな特徴となっています。
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 各ルート日帰り
- 移動手段
- 徒歩、電車、バス
山中渓駅(やまなかだにえき)~布施屋駅(ほしやえき)
京の都から熊野三山への参詣道「熊野古道」は、「雄の山峠」を越えいよいよ紀伊の国へと入ります。
県道と並行する古道を南下し、和歌山県側に峠を越えると、紀ノ川平野・長峰の連山が広がります。紀ノ川北岸の各王子社をめぐり、紀ノ川を越えると、そこは和歌山市布施屋の町。布施屋(ほしや)の地名はかつてこのあたりの人々が熊野詣での旅人を接待したことに由来する街道上の要所です。
このコースは県道をはじめとした車道を進む区間が多いので、車には充分注意して歩いてください。
所要時間:約5時間45分
布施屋駅~海南駅
紀ノ川の横断を終えた古道は、和歌山市東部の農村地帯を南へと向かいます。江戸時代の大庄屋の遺構を残す「旧中筋家住宅」や弓の名人「和佐大八郎」の墓、点在する王子社等をめぐり、矢田峠を越えると、木の神を祀る「伊太祁曽神社」に至ります。
伊太祁曽神社からは、県道に沿って南下し海南市へ。海南市に入ると、長峰の山々が迫り、これから山を越えるという緊張感が沸き立ってきます。このコースも県道をはじめとした車道を歩く区間が多いので、車には充分ご注意ください。
所要時間:約6時間25分
海南駅~紀伊宮原駅
海南駅から古道に合流するとそこは熊野一の鳥居跡。その昔熊野の入口という意味の鳥居があったところです。熊野九十九王子の中でも特に格式が高く別格とされた「藤代王子」(現藤白神社)を過ぎるといよいよ熊野古道の風情を色濃く残す「藤白坂」へとさしかかります。「熊野路第一の美景なり」と「紀伊国名所図会」にも記された御所の芝から、和歌の浦、淡路島、四国等の島影を見渡した後は、下津町から有田市にかけての有田みかんの本場へとさしかかり、みかん山のきびしい登り降りが・・・。
厳しい中にも見事な風景や万葉ロマンが点在するこの区間。間違いなく熊野古道中の名コースのひとつに数えられます。
所要時間:約7時間
紀伊宮原駅~湯浅駅
有吉佐和子の小説「有田川」の舞台となり、万葉集にも詠まれた「糸我の里」からこのコースははじまります。中将姫ゆかりの「得生寺」や日本第一稲荷として知られる「糸我稲荷神社」をはじめ「熊野古道資料館」等様々な見所が点在しています。
糸我峠・方津戸峠と峠を越えると、熊野古道の宿場として、また醤油発祥の地として栄え今も伝統を受け継ぐ湯浅の町。町並の風情が往時の賑わいを偲ばせてくれます。
所要時間:約3時間45分
湯浅駅~紀伊内原駅
歌人「藤原定家」をして「崔嵬の険阻(さいかいのけんそ)」と嘆かせた「鹿ヶ瀬峠」が旅人の行く手を阻みます。
広川町井関から大峠・小峠を越えて、日高町原谷へ至る鹿ヶ瀬峠越は今もなお道険しく健脚向きといえるかもしれません。また小峠を越えると熊野古道に現存する最長の石畳道も残されており、静寂の中にいにしえのロマンを感じさせてくれます。
石畳道を下れば、そこは日高町原谷の里。ここは民芸品として珍重される黒竹の産地。ハイキング・山登りに最適な黒竹の杖など、捜してみてはいかがでしょうか。
所要時間:約6時間50分
紀伊内原駅~西御坊駅
鹿ヶ瀬峠を越えた旅人は、広大な日高平野の山裾を日高川越えへと向かいました。このコースの沿道には安珍・清姫の物語で知られる「道成寺」をはじめ、髪長姫伝説の海士王子、美人王子として知られる塩屋王子等男女の恋物語や美人にまつわる史蹟が数多くあります。
コースとしては日高川の河口に開けた平坦な区間ですが、牧歌的な風景の中にもどこかロマンチックな香りが漂う御坊の町を、ゆっくりと散策してみてください。
所要時間:約5時間55分
西御坊駅~切目駅
暴れ川として知られた「日高川」を越えると、紀伊水道の海明かりの道を南に向かって進みます。このコース全体を通して、紀州の明るい海を満喫していただけることでしょう。
コースの前半には、悲嘆と怒りに狂った清姫が安珍を追ったという伝説にまつわる史蹟が、後半の印南町内には、熊野九十九王子の中でも別格とされる「切目五躰王子社」等があり、歴史や文化にも存分に触れていただくことが出来ます。
所要時間:約5時間35分
切目駅~南部駅
熊野古道の各コースの中で、真っ青な紀州の海を最も身近に感じていただけるこのコース。中山王子からの榎木峠を越えると、海が広がります。途中の岩代王子から千里王子までは、その昔古道中唯一の浜づたいの道を歩いたところ。「伊勢物語」や「枕草子」でもその美しさを讃えられた千里ヶ浜は、今も往時の面影を残しており、きれいな砂浜を求めてアカウミガメも産卵にやってくるほどです。このコースの終点は、日本一の梅林や南高梅の梅干の産地として知られる南部の町。散策のお土産に最高です。
所要時間:約5時間5分
南部駅~紀伊田辺駅
日本一の梅の里、南部の町から海沿いに南下し、古道の分岐点である田辺の町をめざします。田辺市内に入り、名勝天神崎の傍を通って出立王子へ。ここは、それまで導いてくれた海に敬意を表し、海水に身を浸して身を清めた潮垢離の儀式が行われたところであり、古道はいよいよここから山また山の中辺路に進むこととなります。又会津川を渡った田辺の町中には、中辺路と海まわりの大辺路の分岐点にあたる、道分け石も残ります。
所要時間:約4時間5分