熊野古道紀伊路 ロングトレイルの歩き方 1日目 山中宿~布施屋駅(総歩行距離:17.3km)
全長約120kmの長い道のりの始まりです。初日は布施屋駅までの17kmを歩きます。 古い町並みが残る山中宿を過ぎると、難所と言われた和泉山脈の雄ノ山峠(184m)を越えて、紀ノ川が生んだ和歌山平野へと下っていきます。途中、熊野の御子神を祀った「熊野九十九王子」の一つである、中山王子、山口王子、川辺王子を巡り、社殿の美しい山口神社、力侍神社にも立ち寄りながら、川辺橋で紀ノ川を渡ると布施屋です。布施屋はかつてこのあたりの人々が熊野詣の旅人を接待したことに由来する街道上の要所です。本コースでは歩道のない車道なども歩きますので車には注意して歩いてください。
*なお、布施屋駅周辺には宿泊施設がないため、布施屋駅から和歌山駅まで列車で移動して周辺で一泊するのがお勧めです。また、脚力に自信のある方は二日目の行程である海南駅まで歩を進めるのもいいでしょう。
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 1日
- 移動手段
- 徒歩
山中宿(やまなかしゅく)
大阪と和歌山を結ぶ紀州街道沿いにあった宿場町。江戸時代には、大名の参勤交代時に使われた本陣や二十数軒の旅籠が立ち並び、活気のある宿場として参詣者を迎え入れていました。山中渓駅周辺は今も当時の面影が残り、紀州公が泊まった旅宿は現在個人宅ですが、「山中宿本陣跡」として土塀や庭の老木、正門前の溝などが見られます。
馬目王子(うまめおうじ)
京都を出発した熊野詣(くまのもうで)の巡礼者が訪れた和泉国最後の王子であり、古くは山中集落の入口に祀られていました。「足神さん」とも呼ばれ、大きな草鞋が奉納されるなど多くの巡礼者の休息所でしたが、明治時代末期に現在の山中神社に合祀されました。
境橋(さかいばし)
府県境にある日本最後の仇(あだ)討ち場。土佐藩士・広井岩之助は、父・大六を切り捨てた同藩士の棚橋三郎を紀州加太浦で見つけ、仇討ちの許可を紀州藩に申し出ます。当時の紀州藩は仇討ちを許さず、「境橋付近の和泉側ですべし」と岩之助は国払いされ、文久三年(1863年)にこの地で父の無念を晴らしました。
中山王子(なかやまおうじ)
紀伊国に入って最初に立ち寄る王子であり、平安時代に活躍した藤原定家の日記にもその名が見られます。明治時代になると同じ滝畑集落内にある春日神社に合祀され、旧跡も鉄道の敷設工事により無くなりました。
雄ノ山峠(おのやまとうげ)
平安時代後期の南海道だったとのいわれがあり、紀泉国境の主要ルートとして歴史が残ります。和歌山に入って最初の王子スポット、中山王子跡を通り過ぎると、緩やかな登り坂がスタート。標高約180mの峠は比較的なだらかで、峠を越えると眼下に紀ノ川平野や長峰山脈の見事な眺望が広がり、古道歩きの疲れを癒やしてくれます。
山口王子(やまぐちおうじ)
中山王子と同じく、藤原定家の日記にその名が見られますが、江戸時代後期に完成した『紀伊続風土記』には三橋王子とも書かれており、社殿もあったことが知られます。明治時代には山口王子神社がありましたが、明治時代末期に山口神社に合祀され、現在は社殿は残っていません。 ※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
山口神社(やまぐちじんじゃ)
近辺に小野小町の伝説が残る山口王子からほど近い谷集落の北端に鎮座する神社。伊久津比売命(いくつひめのみこと)を主祭神とし、安産の神様として古くから信仰されています。創建ははっきりしませんが、平城天皇が熊野行幸の際に勅使を立てて神殿を拡大したとの伝承があり、平安時代後期から鎌倉時代には参詣途中に上皇や女院も立ち寄ったとも。
川辺王子(かわなべおうじ)
鎌倉時代の藤原頼資(よりすけ)の日記には「四橋王子」という名が見られ、和泉国と紀伊国の境にある境橋から数えて、四番目の橋付近にあったことから名づけられたと推測されています。山口王子が三橋王子といわれたのも、このためだと思われます。なお、川辺王子の位置は時代により変遷し、複数の説が唱えられていますが、平安時代においては藤原定家が残した日記により、現在地が有力とされています。
中村王子(なかむらおうじ)
現在の地名である楠本の古い地名が中村であったと伝えられ、この地に王子社が存在していたことから中村王子があったと推定されています。藤原定家の日記には、中村王子に参った後、吐前王子に渡る前に食事をし、水垢離をしたことが記されています。
力侍神社(りきしじんじゃ)
天手力男命(あまのたぢからおのみこと)を祭神とし、長い参道を進んだ先には向かって左に力侍神社本殿、右に摂社の八王子社本殿が見えます。両殿とも16世紀末頃に一間社流造で建立されたと考えられ、和歌山県内における桃山時代の神社建築の代表例として県指定文化財に登録されています。 ※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
吐前王子(はんざきおうじ)
吐前には、古くは対岸の川辺からの舟渡しで紀ノ川を渡りました。吐前に着くと、紀ノ川の水で自らの心身を清める水垢離を行い、祓いをして王子社に参拝することが通例でした。吐前王子の案内板の北東にはかつて周囲よりも一段高い土地があり、そこに王子社があったと伝えられています。
布施屋駅(ほしやえき)
本日のゴールです。周辺に宿泊所がないため、この日は電車で和歌山駅まで電車で移動して、和歌山駅周辺の宿で一泊しましょう。脚力に自信のある方は二日目の行程である海南駅まで歩を進めるのもいいでしょう。
特産品紹介: 和歌山ラーメン(わかやまらーめん)
和歌山市内の屋台営業が始まりといわれ、県民に長年愛されているソウルフード。豚骨しょう油のスープにストレート麺が特徴で、地元では中華そばと呼ばれます。テーブルに置かれた鯖の早なれずしやゆで卵と一緒に食べるのが定番スタイル。お勘定は“自己申告制”で、「大盛り、すし一つ、卵一つ」と食べた分を伝えるのがルールです。