熊野古道紀伊路 ロングトレイルの歩き方 2日目 布施屋駅~海南駅(総歩行距離:17.8km)
紀ノ川の南に広がる布施屋の細い路地を導き石を頼りに右に左に曲がりながら進むと、和佐の集落に入り、江戸時代の大庄屋の遺構を残す旧中筋家住宅が現れます。和佐王子に立ち寄り、矢田峠を越えると、木の神を祀る伊太祁曽神社に至ります。途中、熊野古道を少し外れて道の駅四季の郷公園に立ち寄り、ご当地グルメやお土産を楽しむ時間を取るのも良いでしょう。伊太祁曽神社を後にすると、その後は田園地帯を歩きながら、海南の町の中へ入っていきます。春日神社を参詣した後、浄土寺を過ぎると海南駅はすぐそこです。
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 1日
- 移動手段
- 徒歩
布施屋駅(ほしやえき)
川端王子(かわばたおうじ)
この地には長らく王子神社が存在しましたが、明治43年(1910年)に近くの高積神社に合祀され、社殿は取り壊されました。その後、地元の人たちにより小さな祠が建てられ、現在に至ります。
※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
旧中筋家住宅(きゅうなかすじけじゅうたく)
江戸時代後期の和佐組大庄屋の屋敷で、紀の川流域随一の大規模民家です。主屋は嘉永五年(1852年)に建てられ、三階の望山楼や二十畳敷きの大広間が特徴。屋根は本瓦と桟瓦で葺(ふ)き分け、桟瓦には丸桟瓦と呼ばれる和歌山独持の瓦を使っています。主屋のほか、表門、長屋蔵、北蔵、内蔵、御成門が国の重要文化財に指定されています。
和佐王子(わさおうじ)
矢田峠の北に位置する王子。『紀伊続風土記』には、この王子社が坂本にあったことから、「坂本王子」と称すとも記されています。川端王子と同じく、明治時代の終わりに高積神社に合祀され、往時の石碑を残すのみです。
矢田峠(やたとうげ)
和佐王子を過ぎて南下し、峠の登り口へ。木々の間から見える紀泉アルプスの景色を楽しみながら、山道を進みます。頂上部では山を切り通した道が続きますが、五畿七道の一つ、南海道が建設されたころの切通を踏襲しているとも。みかんの段々畑の中を下って、平緒王子を目指します。
道の駅四季の郷公園 FOOD HUNTER PARK(みちのえきしきのさとこうえん)
2020年にオープンした道の駅で、25.5ヘクタールの広大な園内には大型遊具やドッグパークがあり、休日は家族連れでにぎわいます。レストランやカフェ、ベーカリー、農産物直売所では、旬の地の食材を使った料理や特産品を提供。ジビエソーセージを味わえるバーベキュースペースでは、貸し切りのキャンプも可能。
平緒王子(ひらおおうじ)
明治時代までにはこの地に小さな社殿の建つ神社がありましたが、明治41年(1908年)に近くの都麻津姫神社(つまつひめじんじゃ)に合祀されました。王子の目の前に王子脇という地名が残っています。
伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)
わが国に木種をもたらした神様・五十猛命(いたけるのみこと)を祭神として祀ります。毎年四月に執り行われる木祭りでは林業や木材業の関係者が参拝する姿も。樹齢千年のご神木の穴をくぐる「木の俣くぐり」は、厄難除けとして有名。境内には六世紀ごろに築造された直系16m、高さ5mの円墳があり、横穴式石室内を見学できます。
※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
奈久智王子(なくちおうじ)
王子の呼び名の由来については諸説ありますが、旧名草郡の各所に通じる道がこの付近に集まっており、「名草の口」の意味で「名口(なくち)」と呼ばれたとも言われています。王子の場所については、現在の奥須佐集落と『紀伊続風土記』に記されている薬勝寺集落(奥須佐から南に1.5km)にあったという説があります。
松坂王子(まつさかおうじ)
且来(あっそ)集落の端に位置する小野坂の麓にあります。現在は且来八幡神社(あっそはちまんじんじゃ)に合祀されており、代わりに庚申が祀られています。江戸時代になると、和歌山城から紀三井寺、黒江、藤白神社へ至る道が整備されたことで、衰退していきました。昭和49年(1974年)に史跡として和歌山県指定文化財となっています。
春日神社(かすがじんじゃ)
紀伊国神名帳で「正一位春日大神」と位置付けられる格式高い神社。祭神は天押帯日子命(あめのおしたらしひこのみこと)で、奈良時代の創建と伝えられます。元弘二年(1322年)に大塔宮護良親王が熊野へお忍びで向かう際に立ち寄り、神殿に隠れたことから今でも神殿の一つは空位に。春日神社を後にして西の小高い丘に登ると、右手に松代王子があります。
松代王子(まつしろおうじ)
春日神社の西にある春日山を登った中腹に小さな祠と紀州藩が建てた「松代王子」の石碑があります。明治42年(1909年)に春日神社に合祀されました。また、昭和33年(1958年)に史跡として和歌山県指定文化財となっています。
※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
菩提房王子(ぼだいぼうおうじ)
江戸時代後期の『紀伊続風土記』には、この王子は廃跡と記されており、早い時期には退転していたと考えられます。明治39年(1906年)に春日神社に合祀され、現在は小さな石仏が祀られています。
浄土寺(じょうどじ)
日限(ひぎり)地蔵を祀っていることから、地元では「日限(ひぎり)さん」と呼ばれて親しまれています。海南の街を一望できる場所にあり、大書院を喫茶室として開放。美景とともに、手作りケーキやコーヒーなどのカフェメニューを楽しめます。寺の周辺には、祓戸王子や熊野一の鳥居跡など、熊野への入口であった史跡があります。
海南駅(かいなんえき)
本日のゴールです。周辺には宿泊場所だけでなく、地元の名産を使用した食事処などもたくさんありますので街に出て食事を楽しむのもよいでしょう。
特産品紹介: 山東たけのこ(さんどうたけのこ)
たま駅長で有名な和歌山電鐵が走る和歌山市山東の周辺は、たけのこの産地として有名です。3月ぐらいから出荷が始まり、最盛期は4月中頃。山東地区の赤土の土壌で育ったたけのこは、繊維質が細かく柔らかくエグみも少ないと、知る人ぞ知る人気の特産品です。
特産品紹介: 紀州漆器(きしゅうしっき)
会津塗や輪島塗と並ぶ日本三大漆器の一つ。室町時代に紀州木地師たちが製造を始めたとされ、江戸時代には紀州藩の保護を受けて地場産業に発展します。紀州漆器の産地として栄えた黒江地区には今も漆器店が数軒残り、「紀州漆器伝統産業会館 うるわし館」では漆器の展示や販売、蒔絵体験教室が行われ、伝統工芸の魅力に触れられます。
特産品紹介: 日本酒(にほんしゅ)
良質な水と豊富な水量に恵まれた酒どころとしても知られる海南市。大規模な醸造工場から老舗酒蔵まで多彩にそろい、蔵見学や利き酒、試飲を行っているところも。各蔵自慢の大吟醸や純米酒を飲み比べ、お気に入りの一本を見つけて、紀伊路歩きのお土産に。国際品評会で高い評価を受けたものもあり、世界レベルの銘酒に酔いしれてみては。