熊野古道紀伊路 ロングトレイルの歩き方 6日目 御坊駅~印南港(総歩行距離:18.4km)
旅の始まりに大楠のそびえる湯川神社で道中の無事を祈り、かつては渡し舟で渡った暴れ川の日高川を越えて、岩内王子へ向かいます。道中、古道から東に少しそれると、藤白坂で処刑された有間皇子が眠ると伝わる岩内一号墳があるので余裕があれば寄り道しても。その後、美人王子として知られる塩屋王子を拝し、王子橋を渡り祓井戸観音寺まで来ると、紀伊路で初めて間近に海を感じながら歩くことができます。悲嘆と怒りに狂った清姫が安珍を追ったという伝説にまつわる草履塚を見学し、一日の最後は叶(かのう)王子にて、最後まで紀伊路を無事踏破できることを願いましょう。叶王子を越えるとほどなくして印南港に到着です。
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 1日
- 移動手段
- 徒歩
御坊駅(ごぼうえき)
湯川神社(ゆかわじんじゃ)
主祭神は木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)で、安産・子授けの神様として「子安さん」と親しまれています。天生年間(1573年~1592年)、亀山城主・湯川氏が娘の安産を祈念し、浅間神社の分霊を移したことがその由来。境内には江戸時代の石橋が残り、樹齢千年もの巨大なクスノキがそびえ立っています。
日高川(ひだかがわ)
115kmの長さを誇る、日本一長い二級河川。熊野詣(くまのもうで)の際は交通手段として渡し舟が使われていました。「道成寺縁起」には、清姫が大蛇に変化し、日高川を渡って安珍を追い掛ける場面が登場します。現在はオートキャンプやカヌー、アユやアマゴの川釣りなど、豊かな清流に恵まれたアウトドアスポットとして人気です。
岩内一号墳(いわうちいちごうふん)
7世紀中ごろに築造された横穴式石室墳。石室からは、木棺に塗られた漆の破片や銀装大刀、六花形の鉄製棺飾金具などの副葬品が発見されました。このことから、中央の皇族や有力豪族など高貴な人物を葬った古墳と考えられ、謀反の罠にはまって藤白坂で処刑された悲劇のプリンス、有間皇子の墓説も残ります。
岩内王子(いわうちおうじ)
建仁元年(1201年)に藤原定家が「イハウチの王子」と記し、享保十五年(1730年)の『九十九王子記』では焼芝(やけしば)王子、江戸時代の『紀伊続風土記』には「也久志波(やくしば)王子は岩内王子を祀り、日高川の氾濫により水没、移された」との記載があります。「やくしば」とは「薬師場」に由来すると伝わります。その後、明治41年(1908年)に熊野神社(いやじんじゃ)に合祀され、焼芝王子神社旧跡碑だけが残されています。
塩屋王子神社(しおやおうじじんじゃ)
平安時代に創建され、九十九王子の中でも特に古く、格式の高い王子社。旧熊野街道に面し、境内には後鳥羽上皇在所の跡とされる御所の芝があります。天照大神(あまてらすおおみかみ)のご神像が祀られ、美人王子との呼び名も。祈願すれば美人の子を授かるということから、子安神社として多くの参拝者が訪れます。平成30年(2018年)には「塩屋王子跡」として国指定史跡となりました。
※熊野古道紀伊路押印帳のスタンプポイント
清姫の草履塚(きよひめのぞうりづか)
安珍清姫伝説の史跡の一つ。この場にあった松に登り、日高川を渡って逃げようとする安珍を見つけた清姫は、草履を木の枝に掛け、裸足で追ったことから、草履塚と名付けられました。この松に安珍が袈裟を掛けて逃げたとの説もあり、「袈裟掛けの松」といわれることも。現在、松は残っておらず、石碑が立っています。
御首地蔵尊(おくびじぞうそん)
地元ではお首さんと呼ばれる観音寺。天保十年(1840年)ごろ、村人が開墾中に石棺を掘り当て、開けるとミイラ化した武士の首が。境内に安置して拝むと、首から上の病気が治るとされ、延命地蔵尊と合祀し、首地蔵尊としてあがめられるようになりました。4月に病気平癒を願った会式が行われます。 古道からは北東に少しそれますが、高台から絶景も望めるスポットなのでぜひお立ち寄りを。
仏井戸(ほとけいど)
火災で消滅した上野王子の旧地。本尊を火事で失ったことから、「二度と熱い思いをさせないように」と、井戸の底に阿弥陀如来、地蔵菩薩、観音菩薩の三尊を刻んだ一枚岩が置かれました。地下の水中に石仏を安置するのは全国的に珍しく、貴重な石組遺構です。年に2回、井戸の水をくみ出して清められています。
上野王子(うえのおうじ)
建仁元年(1201年)に藤原定家が「うへ野王子」と記したのが最初で、王子の位置については、もとは現在の「仏井戸」付近にあり、江戸時代に火難にあい、現在地に移ったと考えられています。
叶王子(かのうおうじ)
『紀伊続風土記』には、叶王子は津井王子が移転したものと伝わり、現在地から1kmほど離れた王子田という地名が残る場所が津井王子の旧社地とされています。名の由来は観音堂のあった現在地に王子が移り、「観音さん」と「王子さん」がひとつとなり、「かのうおうじ」と呼ばれるようになり、地元では願いが叶うの意から「おかのさん」とも呼ばれています。明治41年(1908年)に山口八幡神社に合祀され、現在は「叶王子神社旧跡」の石碑が立ちます。
印南港(いなみこう)
本日のゴールです。漁港内には、2022年にオープンした観光交流施設「かえるの港」があります。原則17時までですが、カフェや地元の特産品が買える物産展などもありますので、時間があればぜひお立ち寄りを。また、印南町はかつお節発祥の地としても有名な町で、漁港内にはそれらを記念した石碑や看板なども建っています。
特産品紹介: いちご
年間を通して温暖な気候の和歌山は、多彩な果物が楽しめるフルーツ王国。御坊市には観光農園が点在し、1月から5月にかけていちご狩りや食べ放題が行われています。甘くて濃厚な香りや味を体感できるのも摘みたてならでは。「さちのか」や「まりひめ」など県オリジナルの品種をそろえているところもあるので、食べ比べを楽しんで。
特産品紹介: スターチス
小さな花が愛らしいスターチス。御坊市は全国屈指の出荷量を誇ります。名田町を中心にビニールハウス栽培が盛んで、県が品種開発した「紀州ファインシリーズ」は紫、青、白など10種が品種登録されています。
特産品紹介: 真妻(まづま)わさび
高級品として人気が高い「真妻わさび」ですが、実は印南町が発祥の地。最盛期には全国でも有数の栽培面積を誇っていましたが、環境の変化などから生産者も減少し、現在では0.1ヘクタール程度となってしまいました。すりおろして使う根茎はもちろんですが、和歌山ではわさび寿司として葉っぱも利用されています。