熊野古道紀伊路 ロングトレイルの歩き方
紀伊路は熊野参詣に最も頻繁に利用された中辺路へと繋がる、熊野三山を目指すためのメインルートです。京都の城南宮から淀川を川舟で下り、大阪の天満橋で上陸、沿道の熊野九十九王子を巡拝しながら南下します。大阪府と和歌山県境の雄ノ山峠から和歌山平野に歩みを進め、紀ノ川を渡り藤白神社へ。ここから藤白坂や糸我峠、鹿ヶ瀬峠など当時の旅人たちが苦労した難所を何日もかけて越え、中辺路、大辺路との分岐点である田辺に至ります。
和歌山から田辺に至る沿道には、伊太祁曽神社、道成寺など由緒ある社寺や、糸我峠、結松など有名な和歌が詠まれた景勝地が点在します。また、山と海が近い紀伊路は温暖な気候で育まれた個性ある特産品や料理に数多く出会えることも大きな特徴の一つです。
本モデルコースでは、和歌山県内の紀伊路にスポットを当て、全長約120kmの道のりを7泊8日で歩けるように紹介します。
※紀伊路ルート上の宿泊情報はこちらからご確認ください(2024年3月時点の情報です。最新の情報は宿の公式ホームページ等でご確認ください)
※紀伊路ロングトレイルのお役立ちツールとして、和歌山県街道マップ及び紀伊路押印帳を準備していますので、詳細は下記ご確認ください。
【熊野古道 紀伊路】 【押印帳について】
マップ及び押印帳は無料での郵送も承っています。希望される方は下記までお問い合わせください。
電話:073-441-2424(和歌山県観光振興課)
メール:e1004001@pref.wakayama.lg.jp
★英語のページはこちらから(Click here for English page)
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
- 所要時間
- 7泊8日
- 移動手段
- 徒歩、電車
山中宿(やまなかしゅく)~布施屋駅(ほしやえき)(総歩行距離:17.3km)
全長約120kmの長い道のりの始まりです。初日は布施屋駅までの17kmを歩きます。
古い町並みが残る山中宿を過ぎると、難所と言われた和泉山脈の雄ノ山峠(184m)を越えて、紀ノ川が生んだ和歌山平野へと下っていきます。途中、熊野の御子神を祀った「熊野九十九王子」の一つである、中山王子、山口王子、川辺王子を巡り、社殿の美しい山口神社、力侍神社にも立ち寄りながら、川辺橋で紀ノ川を渡ると布施屋です。布施屋はかつてこのあたりの人々が熊野詣の旅人を接待したことに由来する街道上の要所です。本コースでは歩道のない車道なども歩きますので車には注意して歩いてください。
*なお、布施屋駅周辺には宿泊施設がないため、布施屋駅から和歌山駅まで列車で移動して周辺で1泊するのがお勧めです。また、脚力に自信のある方は2日目の行程である海南駅まで歩を進めるのもいいでしょう。
布施屋駅~海南駅(総歩行距離:17.8km)
紀ノ川の南に広がる布施屋の細い路地を導き石を頼りに右に左に曲がりながら進むと、和佐の集落に入り、江戸時代の大庄屋の遺構を残す旧中筋家住宅が現れます。和佐王子に立ち寄り、矢田峠を越えると、木の神を祀る伊太祁曽神社に至ります。途中、熊野古道を少し外れて道の駅四季の郷公園に立ち寄り、ご当地グルメやお土産を楽しむ時間を取るのも良いでしょう。伊太祁曽神社を後にすると、その後は田園地帯を歩きながら、海南の町の中へ入っていきます。春日神社を参詣した後、浄土寺を過ぎると海南駅はすぐそこです。
海南駅~紀伊宮原駅(総歩行距離:13.6km)
熊野の入口とされた「熊野一の鳥居跡」を通り、熊野九十九王子の中でも特に格式が高く別格とされた藤代王子(現在の藤白神社)へ。往時の賑わいに思いを馳せ、境内を過ぎるといよいよ熊野古道紀伊路の風情を色濃く残す藤白坂です。坂の頂上にたたずむ「地蔵峰寺」の美しい地蔵菩薩を拝み、「熊野路第一の美景なり」と「紀伊国名所図会」にも記された御所の芝からの絶景を堪能しましょう。その後は、一面みかん畑の斜面を縫うように橘本集落まで下り、急坂が続く拝ノ峠へ。息を切らし峠を登りきると右手に下津の街並み 、そして蕪坂塔下(かぶらざかとうげ)王子を抜けると眼下に有田川と、斜面に張り付くような有田みかんの段々畑が見えてきます。そこから1時間ほど歩くと本日のゴールの紀伊宮原駅に到着です。
※脚力に自信のある方は宮原から7.5km先の湯浅まで足をのばすのも良いでしょう。
紀伊宮原駅~湯浅駅(総歩行距離:7.5km)
8日間の中では1番短いルートですが、見所の多い1日になります。宮原集落を抜けると目の前には有田川が現れ、渡し跡の横に架かる宮原橋を渡ると中将姫ゆかりの得生寺へ。すぐそばの「日本最古のお稲荷さん」といわれる糸我稲荷神社に詣でた後は、隣接するくまの古道歴史民俗資料館で熊野古道の歴史について学びます。糸我王子を抜けると360度見渡す限りの柑橘畑の中を糸我峠へ向けて上ります。峠で絶景を拝み、坂を下り逆川王子を過ぎると醤油醸造発祥の地である湯浅の古い町並みが現れます。熊野古道から外れて、往時のにぎわいを感じ、町の中を散策するのも良いでしょう。
湯浅駅~御坊駅(総歩行距離:23.4km)
宿場町としてにぎわった湯浅から紀伊路最大の難所といわれた鹿ヶ瀬(ししがせ)峠を目指します。井関宿跡、河瀬(ごのせ)王子、汗かき地蔵の祀られている地蔵寺を過ぎると本格的な峠越えとなり、360mの峠を越えた先には石畳の道が現れます。古の旅人の足音が聞こえてきそうな雰囲気を感じながら、黒竹の里として有名な原谷を抜け、高家(たいえ)王子でちょっと一息。うっそうとした竹藪の中にある愛徳山王子、そして国宝千手観世音菩薩や安珍清姫伝説のある道成寺へ向かい、最後は海士王子を経てゴールの御坊駅へ。道成寺では門前町でお土産を楽しむこともできます。
※体力に自信のない方は途中の高家王子から最寄りである紀伊内原駅に向かうこともできますが、紀伊内原駅周辺には宿泊施設がないため、御坊方面または湯浅方面に列車で移動して近隣で1泊し、翌日紀伊内原駅に戻る必要があります。
御坊駅~印南港(いなみこう)(総歩行距離:18.4km)
旅の始まりに大楠のそびえる湯川神社で道中の無事を祈り、かつては渡し舟で渡った暴れ川の日高川を越えて、岩内王子へ向かいます。道中、古道から東に少しそれると、藤白坂で処刑された有間皇子が眠ると伝わる岩内一号墳があるので余裕があれば寄り道しても。その後、美人王子として知られる塩屋王子を拝し、王子橋を渡り祓井戸観音寺まで来ると、紀伊路で初めて間近に海を感じながら歩くことができます。悲嘆と怒りに狂った清姫が安珍を追ったという伝説にまつわる草履塚を見学し、1日の最後は叶(かのう)王子にて、最後まで紀伊路を無事踏破できることを願いましょう。叶王子を越えるとほどなくして印南港に到着です。
印南港~南部駅(総歩行距離:16.1km)
北から歩んできた紀伊路も最終盤。熊野九十九王子の中でも別格とされる切目王子を参詣し、切目中山王子から榎木峠を越えると、右手に海が広がります。有間皇子の結松を通り、岩代王子から千里王子までは梅畑の中を歩きます。「伊勢物語」や「枕草子」でもその美しさを讃えられた千里の浜は、今も往時の面影を残しており、きれいな砂浜を求めてアカウミガメも産卵にやってくるほど。気持ちのいい砂浜歩きを終え、南部峠を越えると日本一の梅林や南高梅の梅干の産地として知られるみなべの街なかへ。三鍋王子で最後のお参りをして本日の旅路は終了となります。
南部駅~紀伊田辺駅(総歩行距離:9.9km)
いよいよ紀伊路歩きの最終日です。今まで歩いてきた道中を振り返りながら、残りの旅の安全を鹿島神社で祈ります。みなべの町に別れを告げ、芳養王子を参り、田辺の町中へ入ります。潮垢離浜(しおごりはま)の記念碑に立ち寄った後は、出立(でたち)王子へ。海水に身を浸して身を清めた潮垢離の儀式が行われた地に別れを告げ、会津川を渡り、中辺路と大辺路の分岐点にあたる道分け石で長かった紀伊路の旅路は終わりを迎えます。最後は少し足を伸ばして、南方熊楠の眠る古刹の高山寺、熊野の神々を祀る世界遺産の鬪雞神社で無事に踏破できたことを伝えると良いでしょう。